慣性センサの特性に関して、正確な定義か統一できていない為、シリコンセンシングのデータシートに書かれる特性の定義については下記を参照のほどお願いします。
アランバリアンスのグラフは慣性センサの出力の時間積分値をその積分時間で除した期待値をプロットしたものです。
特にジャイロスコープの場合、積分して角度を求めるという使い方が多いので、以下の説明はジャイロスコープの場合について記述します。
アランバリアンスの測定は、ジャイロスコープを安定した状態(角速度の入力が無く、温度変化もない状態)で、長時間センサ出力をモニタすることで行います。
このデータより、積算時間を変えながらプロットするとデータシートに書かれるような「バスタブ」に似たアランバリアンスの図が得られます。
このアランバリアンスの図から、積算時間応じた角度誤差(期待値)を読み取ることができます。
なお、積算時間が短ければ、ノイズが、長ければバイアス安定性が支配的になり、積算時間が1秒の位置がAngle Random Walk(ホワイトノイズ)、バスタブの最下点がBIAS Instability(バイアス安定性)と定義されています。
シリコンセンシングの場合、Angle Random Walkは、アランバリアンスプロットにおけるτ=1sの時の値を60で除した値、BIAS Instabilityは最下点の値を0.664で除した値を使っています。
(弊社と同じ方法で算出していないメーカーもありますので、ご注意願います。)
たとえば、τ=1の時のσ値が30deg/hで、かつτ=100sの位置でグラフが最下点を示しており、そのσ値が5deg/hとなっているグラフの場合、
Angle Random Walk | = 30deg/h÷60 | = 0.5deg/√h |
BIAS Instability | = 5deg/h÷0.664 | = 7.5deg/h |
次に角度に期待値をどのように読み取るかですが、たとえば積算時間が100秒の位置で、その時のアランバリアンスの値が5deg/hであった場合、100秒間積分して角度を求めた角度誤差の期待値が5(deg/h)×1/3600×100(s) ≒ 0.14(deg)となります。
なお、アランバリアンスの測定は、測定環境・測定設備・測定条件によって影響されますので、これらの状態によってデータシートに記載される特性が得られない場合もあります。
アングルランダムウォークはジャイロスコープのノイズとして考えることができます。
アランバリアンスの説明文中を参照のほどお願いします。
単位はdeg/√hもしくは、deg/√sが用いられます。
慣性センサに角速度および加速度の入力が無い状態に設置されたときの、出力値のことをバイアス(もしくはバイアスエラー)と言います。
どのような慣性センサにおいても、バイアスは存在します。高精度な慣性センサになるほど0に近づきますが、完全に0にはなりません。
このバイアスは以下の要件によって引き起こされるもので、製品によって異なります。
調整エラー
電源投入毎に発生するエラー
バイアスドリフト
バイアス温度変化
外部の振動・衝撃の影響
慣性センサに電源の供給を開始すると、自己発熱によって引き起こされるバイアス変化であり、電源投入直後に大きく発生し、その後は徐々におさまっていきます。
およそ5~10分程度でバイアス変化の量は、観測が困難なほど小さな値となり、その状態が保持されます。
なお、ドリフトレートという用語がありますが、これとは異なりますので、ご注意ください。
バイアスインスタビリティはジャイロスコープの良さ(高精度の度合い)を示します。
数値が小さいほど、高性能なジャイロスコープであると言えます。
アランバリンアスの説明文中を参照のほどお願いします。
バイアスのうち温度によって引き起こされるファクタになります。
シリコンセンシングの慣性センサは、センサ自身で温度補正機能を保有していますが、温度変化によりバイアス変化が0ではありません。そのため、基準温度におけるバイアス量を0としたときに、温度変化によって発生するバイアスの変化量(幅)をデータシートで定義しています。
なお、いくつかのセンサは内部の温度センサ出力を有しており、アプリケーションの方でさらなる温度補正ができるようにしています。
慣性センサは、角速度(もしくは加速度)を測定するものさしになるものですので、ものさしの「めもり」をちゃんと合わせておく必要があります。
この「めもり」にエラー分が含まれないのが理想なのですが、これを0にすることは事実上不可能です。
これは、調整にも分解能が存在しており、この分解能以上小さい数値は、理想値に近づけることができない為です。
この調整エラーはバイアスおよびスケールファクタの両方に存在します。
入力される角速度(もしくは加速度)とその出力の関係が、一直線になれば理想的な慣性センサなのですが、実際のセンサでは、一直線にはなりません。
この為、センサのベストフィットラインからの乖離分を非直線性とよび、フルスケールに対するパーセント表示もしくは絶対値で規定されます。
(ベストフィットラインについてはスケールファクタの項目を確認ください。)
慣性センサに、角速度(もしくは加速度)の入力を与えたときに、出力が変化する割合になり、入力される角速度(もしくは加速度)の条件をいくつか選び、それらの条件における出力値から、最小2乗法によって求められる直線(ベストフィットライン)の傾きがスケールファクタになります。
スケールファクタにも、調整エラー分と周囲温度によっての発生するエラー分があります。