ジャイロの100年史
実用的なジャイロスコープは20世紀初頭にドイツの Anschutz(1908年)、に米国のE・スペリー(1911年)、イギリスのブラウン(1916年)らが次々と製品化しました。
シリコンセンシングはE・スペリーが1913年に英国に設立したSperry Gyroscope Company Ltdを前身会社としており、100年間にわたりジャイロスコープを設計製造した歴史があります。100年のジャイロの歴史をご覧ください。
1900
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1908 - ジャイロコンパスシステム
1908年、ドイツのヘルマン・アンシュッツが実用的なアンシュッツ式ジャイロコンパスを発明し、ドイツの戦艦ドイツランド号に搭載して試験航海を行いました。
アメリカの発明家であり起業家であるE・スペリーもほぼ同時期に米国にて実用可能なスペリー式ジャイロコンパスシステムを作り上げていましたが、船舶での試験航海は3年後の1911年になりました。
アンシュッツ式とスペリー式は競いあって改良を進め、ジャイロコンパス市場を拡大していきました。
1910
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1910 - スペリージャイロスコープ社設立
1910年 E・スペリーはスペリージャイロコンパスを製造するためスペリージャイロスコープ社を米国に設立しました。
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1911 - Unit Number 100
最初のスペリージャイロ(ユニット番号100)が客船プリンセス・アンに搭載され、ニューヨークからバージニア州ハンプトン?ローズまで試験航海を行いました。試験航海後ニューヨークに戻ったユニット100は米国戦艦デラウェアに搭載されました。
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1911 - 米国海軍 戦艦デラウェア
1911年8月18日戦艦デラウェアにてジャイロ試験を行いました。試験結果は良好で、即座にジャイロシステム4台がスペリージャイロスコープに発注されました。11月13日にスペリージャイロ最初の量産機(ユニット番号101)が米国海軍戦艦ユタに搭載され、続いて米国海軍駆逐艦ドレイトンにも搭載されました。
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1912 - ジャイロスコープカー
Gyroscopic Car大型の回転質量体がジャイロ力を提供し2輪車を直立維持させるジャイロスコープカーは製品化されませんでしたが、ジャイロで二輪車を直立させる概念は100年後にセグウェイとして実現しました。
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1913 - Sperry Gyroscope Company Limited 英国に設立
1913年、E・スペリーはスペリージャイロコンパスを製造するため英国にスペリージャイロスコープを設立しました。ロンドンのピムリコ工場ではイギリス海軍向けを皮切りにスペリーMk1ジャイロコンパスの生産が始まりました。 1982年、英国スペリーはブリティッシュエアロスペースに買収されました。スペリーの技術はブリティッシュエアロスペースが設立したシリコンセンシングへと受け継がれています。
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1913 - E級潜水艦
スペリー初の英国海軍向けジャイロコンパスは英国海軍E級潜水艦に搭載されました。
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1913 - 1914 - Mk2ジャイロ(2型)
初期型を改良したMk2ジャイロ1号機、イギリス海軍に納入直後は戦艦セントビンセントに取り付けられていました。
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1914 - 最初の自動操縦装置
スペリーの三男ローレンス・スペリーはパイロットとしてパリでのデモンストレーションで世界最初の自動操縦装置を成功させ50,00フランを獲得しました。
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1914 - 第一次世界大戦イギリス海軍
船体材料の影響を受けないジャイロコンパスは第一次世界大戦中に重要な航海計器として磁気コンパスに替わって普及しました。米国発のスペリー式ジャイロは大戦中に大幅な改良を行いましたが、ドイツのアンシュッツ式ジャイロは大戦中に改良が進みませんでした。スペリー式ジャイロは英仏露伊など世界中のジャイロコンパス市場を独占しました。
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1917 - 誘導ミサイル
E・スペリーは1917年に航空魚雷を開発しました。世界で初めて成功した誘導ミサイルです。イギリス海軍航空隊の複葉雷撃機ソッピース・クックーから発射の写真。
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1919 - 英国郵船アキテーヌ
スペリー初の商船用ジャイロコンパスは、英国郵船アキテーヌに搭載されました。
1920
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1922 - タンカーJ.A.Moffett
スペリーの最初の商船用のジャイロパイロットは米国オイルタンカーJ.A.Moffett Jr.に搭載されました。
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1929 - 計器飛行パネル
1929年ジミー?ドゥーリトルによる最初の計器飛行(無視界飛行)か成功しました。E・スペリーはジャイロスコープ安定化照準器、空中ジャイロコンパス、人工水平無線ビーコン等を組み合わせた初の計器飛行パネルを開発しました。
1930
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1934 - ハリケーン
ホーカー・エアクラフト社の戦闘機ハリケーンはスペリーのジャイロ姿勢制御技術を使用しました。
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1938 - スピットファイア
スーパーマリン社のスピットファイアはスペリーの初のフライトディレクターユニットを搭載していました。
1940
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1948 - 港湾管理レーダー
スペリーの港湾監理レーダーが世界ではじめてリバプールに設置されました。
1950
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1950 - CL11ディレクショナル・ジャイロ
CL11ディレクショナル・ジャイロ(定針儀)はヘリコプターの制御システムに適用され、60年後の現在でも使用されています。
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1954 - 慣性航法装置
スペリー初のイギリス慣性航法装置
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1957 - RAF C130 ハーキュリーズ
英国空軍C130ヘラクレスはCL11ジャイロを用いたGM9コンパスシステムを使用しています。
1960
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- 21型フリゲート艦
英国海軍21型フリゲート艦、スペリーMk19ジャイロコンパスを使用していました。
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- Mk 23 ジャイロコンパス
スペリーMk23ジャイロコンパス
1970
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1970 - ツインジャイロユニット
ツインジャイロユニットは長距離誘導ミサイルのナビゲーションシステムに使用されます。
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1974 - RAF ニムロッド
英国空軍ニムロッド電子信号偵察機。スペリージャイロスコープを搭載しています。
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1977 - ブリティッシュエアロスペース設立
ブリティッシュエアロスペース社がイギリス政府の航空宇宙産業国有化法によって誕生しました。ブリティッシュエアロスペース社は1982年にスペリーを取得します。
1980
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1980 - LINS300
ブリティッシュエアロスペースは、軍用機用LINS300リングレーザジャイロナビゲーションシステムを開発しました。
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1982 - ブリティッシュエアロスペースがスペリー買収
ブリティッシュエアロスペースが英国のスペリージャイロスコープを買収しました。
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1982 - レイピア対空ミサイル
英国陸軍のレイピア対空ミサイルシステムは、自動操縦装置にガス式回転ジャイロを使用しています。
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1985 - VSG-1 セラミックカップジャイロ
振動式ジャイロスコープ(VSG:Vibrating Structure Gyroscope)が誕生 - シリコンセンシングの前身会社であるブリティッシュエアロスペースは最初の振動式コリオリジャイロスコープを開発しました。VSG-1技術はシリコンセンシングへと引き継がれ、MEMSジャイロVSG-3、VSG-4、VSG-5へと進化していきます。
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1986 - 振り子式列車
イタリアのペンドリーノ振り子式列車はバンクカーブでの高速安定制御のためVSG角速度センサを使用しています。
1990
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1992 - ALARM
ALARM(Air-Launched Anti-Radar Missile)英国空軍の空中発射対レーダーミサイル。 ブリティッシュエアロスペースはマイクロ回転ジャイロスコープによる慣性システムを作り上げました。
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1995 - VSG-2 メタルリングジャイロ
第二世代のコリオリジャイロスコープとしてメタルリング式のVSG-2が登場しました。
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1995 - STS-DRIE
シリコンセンシングのもう一つの親会社である住友精密工業がシリコン深掘りエッチング装置(STS-DRIE)を開発し、シリコンMEMS量産への道を開きました。
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1998 - VSG-3 シリコンリングジャイロ
VSG-3はDRIE技術を適用したシリコンMEMSにてリング型共振子を小型化しました。VSG-3は慣性センサの新市場を開拓し、2000万個以上生産されています。
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1999 - Silicon Sensing Systems Ltd
MEMSジャイロを生産するために、ブリティッシュエアロスペースと住友精密工業の合弁事業としてシリコンセンシング(Silicon Sensing Systems Ltd)を設立しました。
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1999 - BAEシステムズ
ブリティッシュエアロスペースとGECの防衛産業部門であるマッコーニエレクトロシステムズが合併し、BAE システムズが設立しました。マッコーニエレクトロシステムズはいずれも1917年に英国で設立した2つの会社(Kearfott社とPlessey社)のジャイロシステム事業を保有していました。
2000
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2001 - ESC
最初の自動車制動システム(ESC:Electronic Stability Control)にヨーレートセンサとしてシリコンセンシングのVSG-3 MEMSジャイロが採用されました。
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2001 - Segway
電動立ち乗り二輪車SegwayはVSG-3を用いたバランスセンサアセンブリを搭載しました。
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2002 - Inertial Products
BAEシステムズはコンドルパシフィックの慣性事業を取得し、自社の慣性事業と統合してInertial Productsを設立しました。コンドルパシフィックは1999年アライドシグナルの機械式ジャイロ事業(米国ベンディックス社と米国ノースロップ社のジャイロ技術を起点とする)を取得していました。
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2005 - VSG-4 シリコンリング
VSG-4シリコンMEMSリングジャイロは静電駆動、静電検出、ウエハレベルパッケージを採用して小型化を達成しました。
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2006 - シーウルフミサイル
英国海軍の垂直発射シーウルフミサイルはBAEシステムズが開発したMEMS慣性測定ユニット(SiIMU01)を搭載しています。
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2007 - AIS
米国投資会社J.F. リーマンがBAEシステムズの慣性製品事業Inertial Productsを買収しました。Inertial ProductsはAIS(Atlantic Inertial Systems)へと商号変更しました。
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2008 - 10,000,000 MEMS Gyro
シリコンセンシングは1000万個のジャイロ販売を達成。
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2009 - グッドリッジがAISを買収
グッドリッジがAISを買収し、AISはグッドリッジの子会社となりました。グッドリッジは2001年にハンフリー社を買収し、航空宇宙および軍事向け機械式ジャイロ事業に参入していました。
2010
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2010 - VSG-5圧電ジャイロ
カーナビゲーション向けの小型MEMSジャイロとしてCRM100/200(PinPointR)を発表しました。駆動検出にPZTアクチュエータを用いるVSG-5リング型シリコンMEMSジャイロを採用しています。
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2011 - 榴弾砲対応IMU
AISは榴弾砲からの発射衝撃に対応できるMEMS式IMUを開発しました。
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2012 - UTC エアロスペースシステムズ
グッドリッジはUTCに買収され、UTCエアロスペースシステムズと商号変更しました。AISの親会社はUTCエアロスペースシステムズとなりました。
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2012 - Orion?
高感度1軸ジャイロVSG-5と2軸加速度センサを搭載した小型コンビセンサCMS(Orion?)を発表しました。2軸加速度センサは2013年にGeminiとして発売されています。
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2012-2013 - 1,000,000th PinpointR
シリコンセンシングのナビゲーション用ジャイロCRM100/200(Pin PointR)が100万個を達成。
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2013 - 高精度MEMSジャイロ
シリコンセンシングはFOG市場に参入可能な高精度MEMSジャイロCRM-01を発表しました。